疎遠型幼馴染の引きこもり編

世が彼女に与えた平凡な毎日。
彼女は別に、この平穏に飽き飽きしてきたわけではない。
いかに優等生と言えども、高が人である。
悩み 考え、時には行動する。

魔が差した、血迷った、とも言えるかもしれない。
しかし、よくある話で、
 “ 頭のいい人が考えること、やることは一般人の常識を超えた奇抜なものであったりする ” のだ。

彼女はある日に見たニュースの話題に興味を持ち、
その好奇心旺盛な性格ゆえに、突拍子のないことを思いついたのだ。

「引きこもり、か……」

「逃避、拒絶、畏怖……」
「なんで引きこもるんだろう……。外に出ないと解らない情報だって沢山あるのに、
 閉鎖的な空間に閉じこるなんて……。利益があるとは思えない」
「んぁ、いや待てよ……。もしかするともしかして……、引きこもっている人にしか解らない
 魅力的な “ ナニか ” があるんじゃなかろうか……」
「よし……。善は急げだ」

「明日から……。この私は、引きこもる!!」

さして、頭脳派優等生のとある実験がスタートするのである――

疎遠型幼馴染の引きこもり編

優等生の女の子と、その幼馴染で落ちこぼれの男の子。
男の子が思春期のときに疎遠になり始め、その状態が今も続いている。
お互い「そういえば、よくよく考えてみればアイツと幼馴染だっけ」と
記憶の片隅に放り投げている始末。

普段はお互いのことを全く意識していないが、
ちょっと昔を振り返るたびに顔が脳裏をチラつくくらいには気にかけてる。

学校内では、優等生と落ちこぼれということで、相容れない関係。
学校内の誰も、彼女らが幼馴染だなんてことは気付かないだろう。

そんな彼女らが、お互いの特性、“幼馴染”を意識し始めるきっかけが生まれた。

プリントの届け出。

それを任されたのは、彼女とご近所同士である彼だった。

他の誰の目もない一つ屋根の下。
気にかけていないはずだったのに、口から零れていく思いの数々。
幾年も掛けて自然と生まれた二人の溝を、勝手に埋めていくものは一体なんなのか。
幼馴染の絆? それとも……。

二人が最後にどういう結末を迎えるのか、それはまだ誰も知らない。